外国人労働者を正社員雇用する際に気を付けたい就労許可について

少子高齢化社会と近年のグローバル化により、高度な技術や専門的なスキルのある外国人労働者の正社員雇用を積極的に実施する会社が増えています。 しかし、日本国籍を有しない外国人の雇用には、確認事項がいくつかあります。外国人マンパワーを法に適して雇用するにはどのような注意が必要となるのでしょうか?


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正社員雇用可能な外国人とは

日本で働く外国人労働者数は、2023年10月時点で初めて200万人を超えました。国籍別TOP3は、ベトナムが51万人、中国が39万人、フィリピンが22万人となっています。

日本において、日本国籍を有しない外国人を雇用するためには、さまざまな規定があります。

日本で働くためにはまず在留資格が必要

在留資格のない外国人を雇用することは違法です。

外国人は、入管法に基づいた方法で日本に入国しなければなりません。日本に法的に滞在できる在留期間は「パスポートに記載された在留資格」と「在留期間」をベースに決まります。

入管法で定められた在留資格は29種類あり、そのいずれかに該当しなければ日本への在留は認められていません。在留を認められていない場合、日本へ滞在すること自体が違法となるため就労することはできません。

日本で働く外国人のカテゴリー

出入国管理及び難民認定法上、以下の形態で就労が可能となります。

(1) 就労目的で在留が認められる者(専門的・技術的分野)

技術・人文知識・国際業務/企業内転勤/技能/特定技能/介護/教授/高度専門職/経営・管理/法律・会計業務/医療/研究/教育

(2) 身分に基づき在留する者

定住者(主に日系人)/永住者/日本人の配偶者 等

(在留中の活動に制限がないため、様々な分野で報酬を受ける活動ができる)

(3) 技能実習

技能移転を通じた開発途上国への国際協力が目的。

(4) 特定活動

EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士、ワーキングホリデー、外国人建設就労者、外国人造船就労者等

(5) 資格外活動(留学生のアルバイト等)

本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内(1週28時間等以内)で、相当と認められる場合に報酬を受ける活動が許可。

専門職や技術職のケースでは正社員雇用が認められています。また、定住者、永住者、日本人の配偶者のケースも正社員雇用が可能です。

[参照]日本で就労する外国人のカテゴリー(総数204.9万人の内訳)

ここで気を付けておきたいのは、「在留資格を有するすべての外国人に就労許可があるわけではない」ということです。

・在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格:外交、公用、芸術、医療、研究、教育、興業、技能など(19種類)

・原則として就労が認められない在留資格:文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在(5種類)

・就労活動に制限がない在留資格:永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者(4種類)

在留資格が開発途上国への支援の一環としての「技術実習」のケースも就労は可能。ワーキングホリデーなどの特定活動のケースは、報酬の有無はその活動の許可によって左右されますが、就労は可能です。

留学生などの場合は、資格外活動という枠組みで、1週28時間以内まで就労が可能となっています。

[参照]厚生労働省・外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください。

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正社員雇用の課題

正社員雇用のための条件としては、就労することが許可されている在留資格を取得できるかが重要となります。

「ビザ・在留資格」を取得できるかがポイント

大学教授、外国語指導教員、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究といった専門的・技術的な知識を有する人が就労許可を取得することは難しくありません。

演劇、公演といった芸能活動や、スポーツなどの興行、産業分野における熟練技能労働者といった特別なスキルを有する人に対しても就労許可はおります。

留学生に関しても、限定された時間内で就労・アルバイトをする就労許可を取得することができます。

しかし、飲食店のホール接客、調理補助、工場でのライン製造などの「単純労働者」には、就労許可をとることは容易ではありません。

専門的知識をともなう様な業務なら正社員雇用ができる

就労許可を取得するためには、申請時に業務の専門性を明確に明示することがポイントです。

例えば、日本の専門学校を卒業した直後の人材への就労許可の場合、「海外の現地食材を仕入れるための貿易担当者兼通訳者」などといった申請では、専門性が認められやすく就労許可が下りる可能性が高まります。

しかし、レストランなどの飲食業において、「外国人観光客の来客時の通訳者」といった申請である場合は、「通訳者」の重要性が重んじられず、主な仕事内容はレストランにおける給仕であることが推測されます。

この場合は、専門性がなく「単純労働者」と分類され、就労許可が下りないことも少なくありません。

労働許可を申請するにあたっては、申請する職種において、携わる業務がいかに高い専門的なスキルを必要とする業務内容であるかを明確にすることが重要となります。

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外国人を正社員雇用する際の注意

外国人労働者が、前職において就労許可のもと適法に就労していた場合でも、新たに業務内容がまったく違う業務に就こうとした場合は、就労許可が下りないことがあります。

在留資格は会社の業務ごとで変わる

就労ビザは特定の会社の特定の業務に就くことを前提として下りるものです。取得時に5年間の就労許可が下りた場合であっても、転職するとリセットしてしまいます。新規に申請する業務内容によっては、在留期間更新ができなくなってしまうことがあります。

転職する際には、外国人は法務大臣が発行する「就労資格証明書」を入国管理局に申請・取得することで、特定の業務における「在留資格がある」旨を証明することができるようになります。

「就労資格証明書がない」=「就労ができない」ということではありません。

しかし、就労資格証明書の提示があれば、雇用主は対象となる外国人の不法就労の有無を懸念せずに採用することができます。また、雇用後に在留資格更新がスムーズにいくかどうかの指針にもなります。

雇用主は、働ける資格のない外国人を雇い入れた場合、刑事責任・不法就労助長罪を問われる可能性もあるため、事前の就労資格証明書確認は、対象となる外国人の在留資格状況を確認するために有益です。

[参照]厚生労働省:外国人の雇用

外国人を正社員雇用の面接で聞くべきこと

外国人を雇用する際に確認すべき重要項目は以下のとおりです。

・外国人登録証明書

・パスポート

・就労資格証明書

・在留カード

・転職の場合、前職の業務内容

・学歴と雇用先での業務との合致

特に上位4つの項目は、対象となる外国人が不法滞在者でないことを確認できる重要な資料となります。

対象となる外国人が、前職において「どのような業務」に対して就労許可が下りたのかを確認することは、自社業務で適法のもとに雇用することができるか否かを見極める重要な材料です。

対象となる外国人が、初めて就労する場合や、新しい分野にチャレンジする場合は、学歴などが業務内容に合致あるいは関連しているかがポイントとなります。

 

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まとめ

日本国籍を有しない外国人の正社員雇用を検討するときは、在留資格ならびに就労許可の確認をしましょう。

「就労許可」「資格外活動許可」なしに就労を含む報酬を受ける活動をした場合、対象外国人は入管法上の不法就労活動をしたことになり、強制退去あるいは刑事罰となります。雇用主も不法就労助長罪などの罪に問われる可能性があります。

外国人を正社員雇用する際には、法律違反とならないように確認を必ず行うことを忘れないようにしましょう。