日本の良さを堪能してもらおう!外国人観光客への正しい「おもてなし」について

日本には「おもてなし」という素晴らしい文化があります。昨今、外国人観光客の姿をよく目にしますが、海外では現在このおもてなしが注目されているのです。そこで、外国人観光客に満足してもらえるおもてなしについて解説します。 また、日本に来た外国人が残念に感じていることについても紹介します。


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外国人観光客が日本に期待している「おもてなし」とは

日本の「おもてなし」は、日本を訪れる外国人に注目されているホットワードでもあります。そこで、「そもそも、おもてなしとは何なのか?」を中心に、注目を集めている主な理由について解説します。

なぜ日本のおもてなしは注目されているのか

なぜ、おもてなしが外国人観光客に注目されているのでしょうか。考えられる要因は以下の2つです。

・期待を上回ることによる感動

・海外では感じられない日本特有の文化

まず、期待を上回ることで感動を与えている点です。

人は、サービスを利用する際に「対価」として、これくらいはして欲しい…と言う想像をします。これは、外国人観光客にとっても同じでしょう。日本を訪れた際に受けるおもてなしが、その想像を超える満足度を提供することで、外国人観光客に大きな感動を与えています。

2つ目に、日本のおもてなしは海外では感じられない特有の文化である点です。

日本にはチップの習慣がなく、見返りを求めず、お客様に喜んでもらうことを最優先します。
海外でも「ホスピタリティ」という言葉はあり、「相手を思いやること」や「心遣い」をもってサービスを提供してくれることはありますが、その心遣いが日本ではさらに繊細であることが、外国人観光客にとって新鮮で魅力的に映るようです。

そもそもおもてなしとは?

それでは、「おもてなし」とはそもそもどういうことを指すのか、おもてなしの基礎について解説しましょう。

「おもてなし」とは、「もてなす」の丁寧語です。「もてなす」とは、「ものを持って為しとげる」から来ており、ここで言う「もの」とは、物理的な物体だけでなく、目に見えない事象も含まれます。つまり、物や心を使い、お客様に対する扱いや待遇を良いものにすることを意味します。

また、「おもてなし」という言葉には、「表(おもて)無(な)し」、つまり表裏がないと言う意味も含まれています。これは、表裏が無い心でお客様をお迎えすると言う精神を表しています。

上記の2つの語源から、おもてなしとは「対価を求めず、相手に満足してもらえるように真心をもって、お客様に良い待遇を提供すること」と言えるでしょう。

おもてなしの心構え

おもてなしをするにあたって、どのような心構えやポイントをおさえておけばいいのでしょうか。

1.心遣いと気配り

例えば、おしぼりを提供することは単なるサービスですが、これに
・「お疲れ様です」といった一言を添える
・冬は暖かいおしぼりに、夏は冷たいおしぼりにする
・おしぼりの素材や香りを工夫する
・手が汚れやすい食べ物の場合は、食事中や食事後に新しいおしぼりを提供する
といったことを行うことで、おもてなしに昇華されます。お客様の期待を良い意味で裏切る心遣いと気配りこそが、おもてなしを構成する重要なポイントです。

2.相手に見返りを求めないこと

海外でも丁寧なサービスはありますが、その裏にはチップという形で見返りを求めることが多いです。しかし、日本のおもてなしには、そうした見返りを求める文化はありません。純粋にお客様のために尽くす心が、日本のおもてなしの真髄です。

3.対等であることを意識する

日本では「お客様は神様」という言葉が使われる場合もあるように、サービス提供者よりもお客様の方が立場が上のように感じてしまうことがあるかもしれません。

しかし、本来「おもてなし」はする側とされる側は対等とされています。お互いのことを想い敬うことで、お互いに心地よく過ごそうという姿勢があります。

そのため、おもてなしはお客様の要望を全てかなえたり、要求を全てのむということではありません。
無理な要望には、対応が難しいことを誠心誠意伝え、代替案を提案し、お互いにWin-Winな関係を目指すことが大切です。

近年はカスタマーハラスメントという言葉も注目され、サービス提供側のメンタルヘルスを守る取り組みも行われています。
お互いに対等な立場で尊重し合うというおもてなしの精神が、まさに必要な時代と言えるでしょう。

4.1人1人に合わせた対応を心掛ける

おもてなしには、一人ひとりの個人の尊重が不可欠です。

相手をよく観察し、対話をしていくことで、相手のニーズを探り、提案やサービス提供する姿勢が大切です。

特に近年は様々な国から外国人観光客が訪れ、文化や宗教など多くの要素が異なるため、相手の立場にたったおもてなしが求められます。

例えば飲食店の場合は、食べられないものはないか、アレルギーのある食べ物はないかを事前に聞いておくと親切です。

また、海外の文化について日頃から情報収集をしておくと、心遣いや気配りをするポイントの知識が増えていくため、積極的に学ぶ姿勢も大切です。

 

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外国人観光客が残念に思っていること

外国人観光客が、日本のおもてなしに感動していることは間違いありません。しかし、一方で日本古来の習慣が、来日した外国人観光客を残念がらせているケースも珍しくありません。

外国人が本当に望んでいるおもてなしとは何かを知るためには、外国人が日本に来て不満を感じるのはどんなところなのかを理解する必要があります。主に、以下の内容に不満を感じる外国人観光客が多いようです。

 

ごみ箱が少ない

日本滞在中に困ったことで一番割合が多かったのは、「ごみ箱の少なさ」です。2023年の調査では、3割の人がごみ箱が少なくて困ったと回答しています。

日本ではテロ対策など防犯の理由や、ごみの回収やごみ箱のメンテナンスなどのコストの問題が理由となってごみ箱を減らしています。

実際に、公共のごみ箱には家庭ごみの持ち込みなど本来の目的と異なるゴミの投棄がなされており、ごみ箱を撤去した方が美化につながった事例もあったため、ごみ箱削減を実施した自治体も多くありました。

しかし、大阪の道頓堀など、ごみ箱がないことでポイ捨てが増加した観光地もあり、新たにごみ箱を設置し始めている事例も出てきています。

英語を話せる人が少ない

次に困った割合が多かったのは、英語を話せる人が少ないことです。

「訪日旅行中に困ったこと」の調査結果では、22.5%が「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない(英語が通じない等)」と回答しています。

宿泊施設や案内所、観光施設などではスタッフが英語や他の言語で対応できることが増えていますが、飲食店や百貨店・ショッピングセンター、小売店、鉄道駅構内などで困ることが多いようです。

英語対応のできるスタッフを採用することも大切ですが、その人の不在時でも常に対応できる状態にしておくことが大切なため、VoiceTra(ボイストラ)などの多言語音声翻訳アプリを使用することもおすすめです。

無料Wi-Fi

最近では、日本でも無料Wi-Fiサービスを整備しているところも増えているので、年々環境は良くなっていますが、いまだ1割程度の方が、滞在中に困ったこととして挙げています。

それを事前に把握して、レンタルWi-Fiを利用するという外国人観光客も珍しくありません。しかし、手配は手間ですし、荷物が増えるので観光の邪魔になることも考えられます。やはり、手軽に無料でいつでも利用できると言う無料Wi-Fiのメリットを外国人観光客も享受したいところなのです。

無料Wi-Fi環境で困る割合の高い場所としては、

  • 百貨店・ショッピングセンター
  • 飲食店(レストラン・カフェ等)
  • 鉄道駅構内/鉄道車内

などです。地方部ではバス車内やバスターミナル構内で困る割合が都市部に比べて高まります。

飲食店のシステムや食べ方がわからない

飲食店のシステムや食べ方がわからないことも、観光中に困ることの一つです。食券に代表されるような、日本ではごく当たり前のシステムも、海外にはあまり馴染みがないようです。

食券は、使い方さえ理解すれば、外国人でも使えるものではありますが、外国語に対応出来ない店員が指し示す券売機には、日本語が書かれているばかり…これでは食べたくても食べられないでしょう。

食べ方についての例は、調味料です。レストラン等では、複数の調味料をメニューに合わせて使いわけられるようにしてあります。しかし、海外では馴染みのないメニューも多く、どの調味料をどの料理へ使えば美味しく食べられるか?の説明が不十分で、折角の料理を万全な状態で食べられない外国人観光客も少なくありません。

多言語表示が少ない

多言語表示が少ないことも、13%の外国人観光客が困ったことに挙げています。上記の「飲食店のシステムや食べ方がわからない」にもつながりますが、日本では多言語表示がまだ十分とは言えません。

そのため、店に入った時にどのようにすればいいのか、会計はどうするのか、オーダーはどうするのかなど、基本的な仕組みがわかりにくいのでしょう。

また、トイレや喫煙スペースなどの場所を見つけられずに困ることも多いようです。

特に、鉄道駅構内や飲食店、百貨店・ショッピングセンター、小売店などで多言語表示の少なさ・わかりにくさについて困ることが多いという調査結果が出ています。

 

現金しか使えない店が多い

いまだに現金しか使えない店が多いことも、外国人が旅行中に困ることの一つです。世界的に見ると、決済手段として、カードや電子通貨を用いる所謂「キャッシュレス」が浸透していますが、日本ではまだ普及しきれていない地域もあります。

「訪日旅行中に困ったこと」の調査結果では、7%がクレジットカード/デビッドカードが利用できず困ったと回答しています。

決済の手間などの影響で、「ショッピングは全てカード決済」と言うことは、外国人観光客にとっても珍しくはありません。ところが、日本の中小規模の店舗ではクレジットカード決済を導入していないところもまだまだあります。特に観光地に古くからあるお店だと、支払いは現金のみになっていることも少なくありません。PayPayなどQRコード決済や、電子マネーが利用できるお店は増えてきましたが、国内で普及している決済方法を必ずしも外国人が使えるとは限りません。

[参考]訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査を実施しました | 2024年 | 報道発表 | 観光庁

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外国人観光客が期待するおもてなしをするために必要な人材とは

日本のおもてなしは、外国人観光客に期待されていることではあるとは言え、起こり得る問題の全てを拭い去ることは、日本人だけでは簡単に出来ません。

そのため、企業の外国人材の採用は必要不可欠であると言えます。 日本人スタッフ・従業員だけで対応することには、どうしても限界があり、外国人を採用することによって、外国人観光客の満足度が上がる可能性が考えられます。

日本の文化やマナーを理解している外国人人材

日本で就労しようと考えている外国人材は、とても高い就労意識を持っています。日本での暮らしが長い人も多く、それにより日本の文化やマナーなどをしっかりと理解した外国人材も少なくありません。

複数の言語対応ができる人材

外国人を採用することの最大のメリットは、外国語への完璧な対応です。日本人で言う英語のような「習得した外国語」を話せることと、その国のネイティブな言語を話せることとでは、細かなニュアンスなどを説明する際に差が出ます。外国人材なら、お客様からのイレギュラーな要望や相談に対しても対応がしやすくなります。

一方で、日本人で多言語対応できる人材を育成していくことも大切です。外国語の勉強に対して補助を行うなど、会社をあげて取り組むことも必要でしょう。

異文化を理解し、相手に合わせた対応ができる人材

外国では、国毎に文化や習慣などが大きく異なります。その国や周辺国の文化・習慣を理解している外国人材を採用することにより、各国に相応しいおもてなしを実現することができます。宗教に関しても同様であり、宗教毎の正しいおもてなしや、間違った対応についての理解があるため、無用なトラブルを回避出来ます。

また、日本人スタッフにも、異文化研修など他の文化のことを学ぶ機会を作ることが大切です。日本は移民が少なく、多様性への理解や適応がやや苦手な傾向があります。自分たちの価値観が全てではないこと、文化によって慣習や常識が異なることを学ぶことは今後の課題と言えます。

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まとめ

外国人観光客に最適なおもてなしを提供するためには、最低限、言葉の壁は突破しなければなりません。それだけではなく、日本独自の考え方や、海外との違いについての理解も不可欠です。

イマジンネクストでは、日本人向け・外国人向けの異文化研修接客マナー研修を実施しています。インバウンド対応の強化のための教育をお考えなら、ぜひご相談ください。