外国人の離職率を下げるために企業が取り組むべきこと

国によって、労働についての考え方や価値観は大きく違います。中には働き方の制度そのものが異なる場合もあります。 外国人労働者の労働に関する調査をしてみると、日本で働く外国人労働者が、日本企業の待遇や環境に満足していない現状が浮彫になりました。 ここでは、外国人労働者の雇用や定着を図りたい企業担当者の方に向けて、外国人が離職する主な理由や、長く働いてもらうために重要なポイントについて解説します。


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外国人の離職率について

外国人労働者の離職率について、数値が明示されているデータは確認できませんが、外国人の離職状況を推測できる調査結果はあります。

そのうちのひとつが「日本国際化推進協会」の調査です。報告によると、以前日本で就業しており、現在は海外で暮らしている外国人材の日本での勤続年数は約2年となっています。

さらに、そのうちの約半数が日本国内で転職せず、帰国しているという実態も明らかになっています。

同調査によると、外国人労働者が日本を離れることになった理由として最も多いのが、次の2点です。

・自分が求めていた仕事に就くことができなかった
・日本国外で働いた方が良いキャリアを発展させられた

この結果から、日本で働いた経験のある外国人労働者の多くが、2~3年程度でキャリア形成に限界を感じている様子が見て取れます。

また、同調査のなかで、日本企業での勤続年数が2~3年の人が抱える不満として最も多かったのが「社内の多様性が低いこと」と「キャリアの発展性」でした。

ここからも「日本企業ではキャリアが築きにくい」という不満があることがわかります。

[参照]一般社団法人 日本国際化推進協会 JAYC リサーチ事業部 「Japan ASIA Youth Conference ?2018 」

一方で、パーソル総合研究所が2019年6月に行った別の調査によると、外国人労働者と日本人労働者の賃金格差が、外国人の離職率に大きく影響していることが示唆されています。

[参照]パーソル総合研究所「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」の結果を発表
外国人と日本人の賃金格差明らかに。外国人は同じ職種でも平均月収4.6万円安い

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外国人が辞めてしまうのはなぜ?

日本企業を辞めた外国人の退職理由をさらに詳しく見ていくと、その根底には「日本での働き方に馴染めない」という事情が浮き彫りになります。

ここでは、外国人労働者が「日本での働き方や企業に馴染めない」と感じる理由について解説します。

日本の企業文化に馴染めない

外国人労働者にとって「日本の企業文化が肌に合わない」ということもあるようです。外国人に理解しがたい企業文化としては、次のようなものがあります。

・業務全体のスピードが遅い
日本では多くの企業が組織を重んじる風潮を持っています。そのため、一社員の裁量が思いの外小さい場合も少なくありません。

社員がその場で即断した方が、効率がよい場面でも、上司の承認を必要とするため、業務がスピーディに進まないことに不満を抱える外国人労働者がいるのです。

・終身雇用の考え
日本では、「終身雇用の制度が崩壊した」といわれていますが、その考え方や価値観は働き方に大きな影響を与えています。

たとえば終身雇用を前提にした雇用では、新人に一定の教育期間が設けられることが一般的です。しかし、そのような労働環境では、たとえ能力や意欲が十分な労働者がいても「新人」というだけで十分な裁量が与えられません。

そのため、すぐに実力を発揮し、責任ある仕事がしたいと考える外国人労働者の中には、終身雇用の働き方に不満を持つ人もいます。

・空気を読む文化
日本人特有の暗黙の了解が、理解できない場合です。たとえば、一部の会社では、たとえ自分の仕事が終わったとしても、定時で帰らずに自主的に他の人の仕事を手伝うということがよくあります。

多くの外国人にとっては、このような「空気を読む」仕事のやり方が理解できません。

働き方に納得いかない

日本企業特有の働き方に、納得できない外国人は少なくありません。たとえば、次のようなものです。

・効率が悪い
日本企業での働き方が、外国人にとって非効率に思われることがよくあります。たとえば、日本人の社員でさえ無駄だと感じている頻繁で長い会議などはその典型です。

・キャリアアップがしづらい
年功序列の制度が残っている日本企業は少なくありません。しかし、実力主義の外国人労働者にとっては、先輩や上司がいる関係で昇給や昇進がスピーディに進まない点は納得できません。

・なぜ残業をするのかわからない
日本では昔から残業が美徳とされる風潮があり、今でもその価値観を持つ企業は多くあります。

しかし外国では「残業をする=業務の効率が悪い、采配が悪い」と考えます。そのため、自分の仕事が終わったにも関わらず無意味に残業させられることや、他の社員の手伝いのために帰宅が遅れることが大きな苦痛に感じられます。

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外国人の離職率を改善するには?

外国人が日本企業を離職する理由はさまざまです。ここでは、代表的な原因にアプローチし、定着率を上げる対策について説明します。

自社の文化を理解してもらう

外国人労働者が日本企業で働く上で最も大きな壁は「コミュニケーション」です。

日本企業の文化や慣習には外国人に理解できないものも多くあります。しかし、頻繁にコミュニケーションを取りその必要性や良さを知ってもらうことで、理解してもらえるものも少なくありません。

社員同士のコミュニケーションの他、上司や先輩からの指導、企業が行う研修などを通して、自社の文化や慣習を理解してもらえるよう勤めましょう。

また、コミュニケーションは双方向のものです。「自社の何が理解できないのか」「納得できないのか」をじっくりと聞き出すことも忘れないようにしましょう。

キャリアアップをサポートする

外国人が日本企業を離れる最大の理由が、キャリアアップが期待できないことです。

キャリア形成は企業全体で取り組むべき課題です。そのため、外国人労働者の定着を図りたい企業は、企業全体として、社員の職務内容の明確化や人材育成プログラムの導入などに取り組む必要があります。

また、外国人労働者は仕事に対する正当な評価も望みます。評価基準を明確に定め、全社で共有することが大切です。

このように、外国人の雇用と定着には全社的な改革が必要な場合もあります。しかし、一般の企業では「何から手をつけたら良いかわからない」ということもよくあります。
そのため、外国人労働者の雇用や定着施策で悩む企業は、知識がある機関に相談し、サポートを受けることも重要です。

 

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まとめ

外国人労働者の日本企業への定着率は、決して高いとはいえません。離職の原因にはさまざまなものがありますが、キャリアに関する課題や、企業文化や働き方に関する不満が主な原因です。

外国人労働者を雇用し、定着を図りたいと考える企業には、緻密なコミュニケーションや相互理解、環境・制度の整備などを通して、外国人労働者が活き活きと働ける職場をつくることが求められています。

外国人の離職率を下げるには、外国人が日本で働きやすいように企業が手厚くサポートすることが重要であるといえます。

ときには研修を行ったり、1on1ミーティングを行ったりしながら、気持ちを吐き出し相互理解のきっかけになる時間を意識的につくり、優秀な外国人が長く働ける職場づくりを目指しましょう。

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