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外国人の「就業時間」に対する考え方
日本人から見ると、外国人の多くに「時間にルーズ」という印象を感じることがあります。プライベートならまだしも、職場においても同じではないでしょうか。
たとえば、8時出社がルールとしましょう。日本人である私たちからすれば、遅くとも始業5分~15分前には出社しなければ、という気持ちになります。これは、会社に強制されなくても必要と感じている意識でしょう。小学校時代から強く5分前や10分前行動を意識づけされた賜物であり、知らない間に自分の中で常識となっています。
それゆえ、8時に到着した場合はNGであり、遅刻と判断されかねません。ましてや、1分以上の明確な遅れは厳禁です。
しかし、こうした日本独自のルールは、世界中の人に適用されると思ったら大間違いです。外国人の中には、少々の遅れは遅刻ではないと判断し、日本人から見た場合の10分や15分の明らかな遅刻でも、遅刻の意識がない場合もあります。「国民性の違い」といえばそれまでですが、この大きな差はなぜ生じるのでしょうか。
「遅刻」という概念の違い
国民性によって時間に対する意識は大きく異なります。不確実性の高い国や地域(交通インフラが整っておらず、時間通りに交通機関が動かない、など)に住んでいる人の多くは、「予定通りにならないこと」に対して寛容です。自分の力の及ばないことによって遅刻してしまうのはしょうがない、と感じているため、日本人が遅刻へ抱くような罪悪感は彼らの中にまったくありません。
日本企業の場合、遅刻は自己管理ができていない結果とみなされ、遅刻をした人は罪悪感を覚えます。プライベートでも遅刻の罪悪感は決して少なくありません。遅刻は、「相手の時間を奪ってしまう」「相手に迷惑をかけてしまう」という考えが根底にあると言えるでしょう。
もちろん、外国人にも遅刻の概念はありますが、遅刻はする側にとってもされる側にとっても「罪」とまではなり得ません。不確実性の高い国から来た人は、時間を守れないことに対する不安やストレスを感じにくく、「人生は不確実なことが自然」と考えます。
はじめにこの部分を理解しておくと、外国人との付き合い方におけるストレスは軽減されやすくなりますね。
定時出勤・定時退社
「時間はあくまでも目安でしかない」と考える文化は日本以外では多くあります。日本人の上司が1分の遅刻に対し叱責したところで、外国人からするとそれは問題ないレベルでしかないのです。
出社定時の8時を過ぎて出社することが、むしろ当然であると解釈する外国人もいます。出社時間だけではありません。退社も当然定時に、と考えています。退社時間が17時だとすると、17時ぴったりに会社のビルを出られるように退社準備をする、といった話もよく聞きます。
外国人の残業への意識は、日本人のそれとはやはり異なります。サービス残業をしてまで会社に尽くそうとする、自己犠牲精神を外国人に求めるのは無理があります。
日本では、「責任をもって仕事をする」ことはイコール「残業をしてでも終わらせる」という感覚がありますが、外国人の中には「決められた就業時間内にできる範囲のことをしっかり行う」ことが「責任をもって仕事をする」ことだと考える人もいます。
また、残業になるということは、会社や人事側が業務量と人員を適切に配置できていないため、個人の責任ではないと考える文化もあります。
「仕事のためにプライベートを犠牲にしない」という考え方
外国人のこうした考え方の根底には「プライベートファースト」の発想があります。つまり、プライベートを犠牲にしてまで働かないという考え方が外国人の基本的スタンスです。
日本人の場合、会社にいる時間は就業時間と考え、私的な電話等はつつしむ傾向があります。しかし、他の文化では、会社にいる時間であっても当然「プライベートファースト」は尊重されるべきもの、と考えられることもあります。
日本でも最近では育児休暇や介護休暇が取りやすくなり、プライベートとの両立ができる働き方が模索されていますが、理解のある職場ばかりではありません。
外国人と日本人の溝を埋めるために歩み寄るべきか、それとも、時間をかけて外国人に日本的文化を説くべきか?外国人材を雇用する上で、大きなターニングポイントとなり得る部分ですね。
外国人は根回し的な仕事は行わない
日本人特有の仕事における根回しも、外国人に求めるのは難しいことかもしれません。
仕事における根回しというのは、たとえば会議に必要な資料の作成や配布といった、事前準備のような事務的な仕事といえばわかりやすいでしょうか。
日本人との仕事経験が豊富な外国人ならば、このスタンスは理解できるでしょう。しかし、日本への理解や日本で仕事をした経験値が浅い外国人には、少々酷な注文といわざるを得ません。
日本人であれば、業務時間を使って、または、早出を行ったり昼休みの時間を利用して資料作成をすることも仕事のひとつです。しかし、外国人に根回しは「無駄な時間」という考え方があるため通用しません。
会社にいても、プライベートな時間を尊重してあげるのが外国人への配慮です。外国人にとっては、それが「マナーである」と言い換えられ「日本人が非常識」と捉えられるかもしれません。
資料作成をはじめ会議の下準備など、根回し的な仕事への協力を促すのであれば、休憩時間に指示を出すことはNGです。決められた勤務時間内、就業時間中に作業を依頼するようにしましょう。
外国では「給与体制はキャリア重視」という考え方
日本企業が採用する給与体制は、年功序列型が多いです。最近でこそ、海外の企業に倣い脱・年功序列が徐々に進んでいる印象もありますが、潜在的意識として未だに根強く残る企業もあるでしょう。
給与体制で、わだかまりが生じる危険性もあります。「やっ(働い)たらやっただけのこと(報酬)がある」と考える外国人を、日本人より安い賃金で雇う発想は安易であり決してしてはいけないことです。
海外では日本特有の年功序列ではなく「出来高制」
海外企業の多くが採用する給与体系は、あくまでもキャリア重視の(完全)出来高制です。評価を言葉でするのではなく、明確な対価として給与に反映させましょう、というのが外国人にとって理想的な考え方です。
給与体制は人事の最重要事項のひとつです。それゆえ、デリケートな事項でもあります。一概に「外国人にはこうあるべき」と具体例を挙げることは難しいですが、成果をあげたら何らかの形として提示する、という考え方を持つことも外国人を雇う上では必要です。
望ましい人事評価制度を取り入れる
最も望ましいのは、外国人の仕事を正しく評価し本人の納得をえて、それに見合った対価も支払う形でしょう。そう簡単なことではありませんが、外国人とうまく折り合いを付けるための手段として、有効な方法に以下の方法があります。
それは、人事評価制度を導入するという方法。自分がどの点で評価されたのか、あるいは評価されなかったのかを一目で外国人に納得してもらうための評価制度です。言葉の壁もあるかもしれませんが、方向性として正しいといえるでしょう。
人事評価制度は、社員の実績を評価することだけが目的の制度ではありません。社員が会社にどれくらい貢献しているかを示す「貢献度」も評価に含まれます。外国人は、プライベートファーストを重んじるため、人事評価制度の貢献度の評価が、外国人と日本人の相互理解を深めるヒントとなり得るかもしれません。
当然、そのために「サービス残業をしなさい」と、外国人へ無理強いすることは賛同できません。外国人の意識の根底に、できるだけ自然な形で貢献度の重要性を植え付けることができたならば望ましい人事評価制度であったといえるでしょう。
外国人雇用の目的を「社内で共有」
外国人雇用を進めている日本企業内であっても、何のために会社が外国人を採用しているのかについて考えたことがない日本人社員は多いと思います。しかし、外国人雇用の目的を知ることは、日本人社員個人にとっても重要です。
たとえば、A国出身の外国人がある会社に採用されたとしましょう。その会社がA国と深くかかわる事業を展開しているなら、A国出身の外国人を雇用するメリットは大きくなります。外国人雇用の目的は、会社の理にかなう形で戦力を得ることにあります。そのため、日本人よりも優れたキャリアを持つ外国人材の雇用は、珍しいことではありません。
この目的を社内全体で共有していないと、給与面で誤解や摩擦が生じる危険もあります。より優れたキャリアを有する外国人が日本人社員以上の高待遇であることは、不思議ではないのです。
まとめ
外国人と日本人との間に生じる、仕事に対する考え方の溝はまだまだ深いです。
文化も言語も受けてきた教育も異なるわけですから、違いが生じるのは仕方のないことです。しかしながら、この溝を埋めがたいものと捉えてしまうか、歩み寄りによって埋められると捉えるかによって、外国人へのアプローチ方法とアプローチ成功率も変わってきます。
日本企業はいま、就業(拘束)時間、プライベートの尊重、給与体制の観点から外国人材との相互理解を深め、日本人と外国人が共により良い仕事を行える職場環境を整える必要性に迫られている、大きな転換期にあるといえるでしょう。
異文化について理解を深めたいなら、異文化研修の受講をおすすめします。価値観の違いを知ることで、様々な視点が身に付き、チーム運営や人材育成に役立ちます。
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