外国人を採用するなら知っておきたい「外国人にかかる税金」の知識

仕事をする上で「税金」は切っても切り離せないキーワード。雇用する側は「源泉徴収」等の書類のやり取りがありますよね。では、外国人を採用・雇用する際の、当該外国人に課せられる税金はどうなのでしょうか。そこで、外国人の税金について解説します。


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居住者か非居住者かで外国人にかかる税金が変わる?

外国人労働者には、所得税・住民税ともに日本人と同様に源泉徴収などの取り扱いを受けます。その外国人の母国が「申告納税制度」を採用する場合、源泉徴収により税金が控除されます。

外国人従業員から税金を徴収する場合は「居住者」か「非居住者」かで課税方法が異なってくる

外国人を雇用して源泉徴収する場合には、当該外国人が居住者であるか、非居住者であるかにより、その具体的な方法が異なります。

「居住者」の場合

当該外国人労働者の住所が日本国内にある、もしくは国内に1年以上居住している場合、居住者とみなされます。
居住者である場合、5%~40%の源泉徴収がされ、日本人と同じように、年末調整または確定申告で所得税額が決まります。

一般的に、雇用主は外国人労働者から「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出されます。これにより、給料を支払う度に扶養する親族の数に応じて給与所得の源泉徴収税額表により税額を算出します。そして、源泉徴収を行った後にその年最後の給料の支払いを行う際に年末調整を行い、納付すべき所得税の精算を行います。

「非居住者」の場合

非居住者の外国人労働者の場合も、日本国内で生じた所得にしたがって所得税を納める義務がある点においては変わりありません。原則として「租税条約」により免税の適用がある場合を除き、所得の20.42%が源泉徴収の対象となります。ただし、 給与所得控除は適用されません。

源泉徴収票を出さない場合、雇用主は源泉徴収税を納税していない可能性も疑われます。それを外国人労働者が知ると、税務署などに相談されて余計なトラブルに発展してしまうこともあり、注意が必要です。

なお、定期的に帰国する「ホームリーブ」についても、帰国旅費が非課税となる場合がありますので注意しましょう。

[参考]No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率|国税庁 (nta.go.jp)

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外国人の所得税について

採用された外国人に課税される所得税の税額は、当該外国人労働者が居住者であるか非居住者であるかによって、適用される内容が大きく異なります。

居住者の場合

居住者の場合は、最初の給与の支払い日までに、外国人労働者から「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出を受け、給与を支払うごとに扶養する家族の人数「給与所得の源泉徴収税額表」の甲欄によって税額算出します。

外国人が所得税の課税対象となるのは、主に以下の3つの所得方法が考えられます。

・日本で働いて給料をもらう

・海外から給料が支払われている

・海外から日本に送金されている

この3つの所得のうち、当該外国人がどのような属性を有しているかによって、課税対象の範囲が異なります。具体的にいえば、外国人の居住者はさらに、永住者と非永住者に分類されます。

・永住者:日本国籍を有する、または過去10年間で日本に住所・居所を有していた期間の合計が5年以上

・非永住者:日本国籍を有さず、過去10年間で日本に住所・居所を有していた期間の合計が5年以下

永住者と非永住者で、課税対象となる所得の範囲は以下のように異なります。

・永住者:日本国内と海外で生じたすべての所得

・非永住者:日本国内で生じた所得と、海外で生じた所得のうち日本国内で支払われたものや、海外から送金されたもの

居住者である外国人労働者には、要件に当てはまれば「所得税控除」や「扶養控除」を受けられます。

非居住者の場合

外国人労働者が非居住者の場合、給与の税率20.42%の源泉分離課税によって納税します。ただし、外国人の出身国と「租税条約」が締結されていることを前提に、以下の条件がそろえば「短期納税者免税制度」として税金が免除になる場合もありますので注意が必要です。

①滞在期間が183日以内であること

②雇用者が非居住者であること

③報酬が日本国内の恒久的施設(事業を行う場所等)によって負担されるものでないこと

非居住者の場合、課税対象となる所得は、日本国内で生じた所得のみとなります。ただし、居住者と異なり所得控除について「雑損控除」「寄付金控除」「基礎控除」の3つしか適用されません。扶養控除も適用対象外となります。

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外国人の住民税について

外国人労働者を採用する際の、もう一つの大きな税金である住民税について解説します。住民税についても、当該外国人が居住者か非居住者かによって扱いが異なります。基本的に「居住者は住民税が課税」「非居住者は住民税が非課税」と覚えておき、以下の細かい部分についても正確に把握しておきましょう。

居住者の場合

居住者の場合の取り扱いは、その年の1月1日の時点で、 居住者として日本に居住している場合は住民税の納税義務者となります。前年の1月1日~12月31日までの収入に応じて住民税は計算され、1月1日時点で住んでいた地域に納税します。

ちなみに、当該外国人が12月末までに出国する場合は、それまでに未払分の税額を納める必要があるので注意が必要です。

外国人労働者を雇用している事業者は、日本人労働者同様に住民税を毎月の給与からの天引きにより、これを翌月の10日までに市町村に納めなければなりません。ただし、所得税とは異なり天引きする金額については、市町村側で計算してくれます。

つまり、事業者側では住民税の税額計算をする必要はなく、市町村から指定された金額を給与等から天引きすれば問題ありません。また、年末調整を行う必要もありません。

[参考]総務省|地方税制度|外国人の方の個人住民税について (soumu.go.jp)

非居住者の場合

非居住者の外国人労働者は、日本に居住していないので原則として住民税は非課税です。ただし、日本に住んでいない非居住者でも日本国内に事務所か家屋を所有している場合は、住民税のうち「均等割」の部分についてのみ納税の対象となるので注意しましょう。

税金の問題は何かとデリケートで、扱いを間違えると余計なトラブルが発生します。日本人労働者と扱いが異なる部分も少なくないので、雇用主としては外国人労働者を採用するのに尻込みしてしまうかもしれません。

しかし、それ以上に外国人の雇用にはメリットがあります。昨今、とくに中小企業やベンチャー企業が海外進出など海外に目を向けるにあたり、自社で外国人を採用しようという動きが活発です。

その他にも、イノベーションなどの分野において外国人が有利に作用するといった話もあり、会社を成長させるにあたって外国人労働者の存在は必須であるともいえます。

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まとめ

外国人労働者の所得税や住民税の取り扱いは、日本人労働者のそれとは異なる部分も少なくありません。しかし、大枠は外国人が居住者か非居住者かで分類されているので、その2パターンをしっかり押さえておきましょう。