目次
外国人採用の現状
日本における外国人採用の現状はどうなっているのでしょうか。また、どのような業界で外国人労働者が採用されているのか、みていきましょう。
中小企業では人手不足が深刻化
厚生労働省の発表によると、有効求人倍率は2018年が1.61倍、2019年は1.60倍と10年連続で上昇し続けました。
2020年は新型コロナウイルスの影響もあり、1.18倍まで下がりましたが、2023年4月の時点ではは1.32倍に上昇しています。
1倍以上は売り手市場と言われる有効求人倍率ですが、これがが高いというのは、求職者にとっては好ましい環境ですが、人材を確保したい中小企業にとっては厳しい環境です。
2023年に人手不足による収益悪化などで倒産した企業は10月時点で206件となり、すでに年間ベースで過去最多となっています。ここからも分かるように、人手の確保が中小企業の死活問題となっています。
[参照]人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月) | TDB景気動向オンライン (tdb-di.com)
そこで、いま中小企業が人手不足の解消に期待しているのが外国人労働者です。景気が回復してきた2013年あたりから外国人労働者が急激に増加していて、人手不足が深刻化している中小企業で積極的に採用されてきています。
専門技術をもった外国人労働者が増加中
日本政府は国際的な競争力を高めることを目的として、1988年以降から専門的・技術的な能力をもった外国人を積極的に受け入れてきました。2022年12月時点では、日本国内に専門技術をもった外国人は58万人ほどいます。
2012年の時点では、専門的・技術的分野の在留資格をもった外国人は20万人でしたので、大幅に増加しているといえます。
また、技能実習生として日本に来ている外国人も32万人以上います。さらに、30万人ほどいる外国人留学生の中には、資格外活動としてアルバイトをするケースも増えています。
外国人労働者の多い業界
厚生労働省がまとめた「外国人雇用状況の届出状況まとめ」によると、外国人労働者、外国人労働者を雇用する事業所ともに、製造業が最も多くなっています。製造業は外国人労働者数全体の26.6%を雇用しています。
産業別外国人雇用事業所の割合では、卸売業・小売業(18.6%)、製造業(17.7%)、宿泊業・飲食サービス業(14.4%)、建設業(11.8%)、サービス業(7.9%)、医療・福祉(6.2%)、情報通信業(4.2%)、教育・学習支援業(2.5%)となっています。
産業別外国人労働者数の割合では、製造業(26.6%)、サービス業(16.2%)、卸売業・小売業(13.1%)、宿泊業・飲食サービス業(11.5%)、建設業(6.4%)、教育・学習支援業(4.2%)、情報通信業(4.2%)、医療・福祉(4.1%)と報告されています。
対前年増加率をみると、「医療・福祉」が最も多く、28.6%の増加となっています。
[引用]「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
外国人を採用する際の課題
国内での外国人採用は中小企業を中心に増えてきているものの、それに伴う課題もあります。外国人を採用する際の課題にはどんなものがあるのでしょうか。
外国人を受け入れる体制を整える必要がある
国内2,008社からの回答をもとにまとめられた「企業新卒内定状況調査」の中に、23年卒で外国人留学生を採用したかどうかという質問がありました。結果は、「採用していない」が7.5%で、「採用活動はしたが、採用できなかった」が82.0%、「採用した」が10.4%と大きな差がありました。
外国人を採用しない、もしくは予定がない理由として最も多かったのは、「外国人が活躍できる環境が整っていない」(47.2%)続いては、「現場の受け入れ体制が整っていない」(38.6%)ということです。というものでした。
こうしたデータから、外国人採用の際に課題となるのが、日本語能力やビザの申請の手続きではなく、企業の内部体制が大きな壁になっているということが分かります。
多言語でのコミュニケーションが必要な場合がある
採用した外国人がみんな流暢に日本語を話すことができればコミュニケーションが楽ですが、そうでない場合は社内でのコミュニケーションを多言語化する必要が出てきます。
多言語化するにあたっては、採用した外国人の日本語レベルや日本語以外で共通語になる言語が何かなどを把握しなければなりません。また、社内の張り紙なども多言語化していく必要が出てくるでしょう。
こうした社内での受け入れ体制が、外国人労働者の働きやすさに大きく影響を及ぼしていきます。多言語化するというのは、外国人を採用する上で大きな課題となるものです。
資格の確認などが多い
提示された資格で就労が可能なのかどうか、滞在期間はいつまでなのかは、選考の段階で確認しておく必要があります。
現在、日本では19種類の就労ビザがあり、このビザを持っていると指定された範囲内で働くことができます。観光客が取得する「短期滞在」や日本での実地研修者用のビザである「研修」、大学や専門学校の留学生が取得する「留学」などのビザでは基本的に働くことができません。
ただし、留学生については「資格外活動の許可」を取ることで、一定の制限のもとアルバイトなどすることができます。
事業者が、短期滞在や留学など就労が認められていない在留資格の外国人を就労させた場合、または在留期限を過ぎた外国人を就労させた場合は「不法就労」となります。
不法就労外国人を採用した事業主は、入管法73条2項によって、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられるので、資格の確認は入念に行なわなければなりません。
外国人を採用するメリット
外国人を採用するに当たっては課題があるのも現状ですが、メリットも多くあります。
多外国語に対応できる
日本に働きに来ている外国人の出身国はベトナム(25.4%)、中国(21.2%)、フィリピン(11.3%)、ブラジル(7.4%)、ネパール(6.5%)、インドネシア(4.3%)などです。
[参考] 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
これらの国から働きに来ている外国人は、自国の言語はもちろんのこと、日本語や英語も話せる人が多くいます。例えば、フィリピンでは英語が公用語にもなっていますので、日本に来る労働者の多くが英語を話せます。
そのため、多言語に対応できる外国人を採用しておくと、外国人のお客様が来た際に接客や翻訳、通訳などをしてもらうことができるというメリットがあります。
外国の文化・慣習・取引慣習に詳しい
企業が外国人を正社員として採用している目的として一番多いのが、「優秀な人材を確保するため」というものです。
外国人採用・活動の理由として圧倒的に多いのも、「日本人労働力が集まらない」(50.2%)というものです。
他にも企業が外国人材を採用する目的として、「外国人としての感性・国際感覚等の強みを発揮してもらうため」「海外の取引先に関する業務を行うため」「語学力が必要な業務を行うため」などがあります。
外国相手に商売を成功させるためには、その国の文化・慣習・取引慣習を知らないと難しいので、そうした知識を持っている外国人を採用することにはメリットがあります。
[参照]産業労働省 中小企業における外国人雇用の現状と課題 (令和2年7月)
適応力が高い
日本に働きに来る外国人は言語、文化、慣習の異なる土地に行こうとする気概のある人たちです。こうした人たちは、言語や文化について学ぶことに熱心で、新しい環境に適応しようと努力します。
また、日本に働きに来たいという人が多くいる中で選ばれてくる人達なので、適応力に限らず基本的なスペックが高い人が多くいます。
売上高や採算が増加する傾向にある
日本政策金融公庫総合研究所が2016年にまとめた「中小企業における外国人労働者の役割 ~「外国人材の活用に関するアンケート」から~」によると、外国人を採用している企業のほうが、売上高が増加傾向にあるというデータが出ています。
最近5年間の売上高と採算に関するデータを見ると、売上高が増加傾向にあると答えた外国人雇用企業は49.1%、非雇用企業は27.1%でした。また、採算が改善傾向にあると答えた外国人雇用企業は43.2%、非雇用企業は29.2%となっています。
売上高、採算ともに外国人労働者を採用している企業のほうが、そうでない企業よりも良いということです。外国人労働者を採用することでこうした変化が見られるのであれば、確かに外国人労働者を採用するメリットがあるといえます。
まとめ
日本国内においては、中小企業を中心に人手不足を解消するために、外国人採用が増加傾向にあるのが現状です。ただし、外国人を雇用することには、企業側の受け入れ体制などの課題もあり、外国人の雇用に消極的な企業も多くあります。とはいえ、外国人を採用することのメリットも多いので、これから外国人を積極的に雇用する企業も増えていくと考えられます。
採用した外国人社員の離職を防ぎ、社内で活躍してもらうためには、最初の教育が大切です。異文化で働くためのマインドセットや、企業で大切にしているビジネスマナー、仕事の進め方などを共有することによって、異文化で生じやすいストレスを軽減します。研修をご検討なら、ぜひイマジンネクストへご相談ください。