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なぜサービス業界は人手不足?
サービス業界は、離職率が高い業種として知られています。中でも宿泊業・飲食サービス業は新卒就職者の就職後3年以内の離職率が高校卒で61.1%、大学卒で51.5%あり、産業別では一番離職率が高いという結果が出ています。
[参考]厚生労働省 令和3年度発表_ 新規学卒就職者の離職状況
以下では、サービス業界の離職率が高くなってしまう原因について見ていきましょう。
低賃金の問題
サービス業界は、他業種と比較して「従業員の賃金水準が低い」という特徴があります。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査の 結果の概況」によると、宿泊業・飲食サービス業の平均賃金は、「男性約29万円」「女性約22万円」となっています。
しかし、他業種では電気・ガス・熱供給・水道業で「男性約41万円」「女性約33万円」、教育・学習支援業で「男性約44万円」「女性約32万円」となっています。比較してみると、サービス業の賃金の低さがわかります。
[参照]厚生労働省・令和5年賃金構造基本統計調査の概況(5)産業別にみた賃金
また、賃金が低いのに対して、拘束時間が長いことも特徴で、他の業種と比べ、サービス業は労働時間に見合う賃金が得られない点も、離職率が高い原因のひとつと考えられます。
営業時間の問題
サービス業界で長時間労働を強いられる要因として、職種によっては「土日祝日にも出勤の必要がある」「夜間の営業を行っている」など、営業時間が長いことが挙げられます。
また、コンビニエンスストアなどのように、24時間営業を行っている企業の場合、深夜の人材確保が難しい側面があります。人材確保ができていないにも関わらず、営業を維持するために、店舗責任者が長時間労働を行っている現状もあります。
人材不足から長時間労働を強いられることで「長時間労働を求められる職種」というイメージが定着してしまっているのです。
サービス業界へのマイナスイメージにより求職者に敬遠されて、さらなる人材不足を招く悪循環に陥っていると考えられます。
休日の問題
サービス業は、土日祝の客数が多く、土日祝日の勤務が必須の企業も多くあります。土日祝日に出勤の必要があるため、休日の固定が難しく、シフト制で休日を交代で取る形になります。
休日が固定できないことで、場合によっては週5日以上の連続勤務をしなければならないこともあります。また、定休日が決まっている場合でも連休の取得が難しく、年間を通して「お盆と年末年始しか連休が無い」という企業も珍しくありません。
サービス業の場合、年中無休の店舗もあるため、休日の確保が難しい点も離職率が高くなってしまう要因として指摘されています。
人間関係の問題
サービス業はクレーム産業でもあります。お客様相手の仕事なので、クレームを受けることもあり、その対応でストレスを感じてしまう人も多いでしょう。
最近はカスタマーハラスメントの認識が生まれ、お客様からのハラスメントから従業員を守るといった動きが少しずつ出始めていますが、まだまだ十分な対策ができていない現場もあるでしょう。
そのため、お客様からのクレームや無茶な要望を受け、心が疲弊して離職を考えてしまうこともあると考えられます。
サービス業界が今後人手不足を解決するための取り組み
働き方改革で、残業時間に上限規制が設けられて、違反者には罰則も課されるようになりました。サービス業界でも労働時間の是正のために、さまざまな取り組みで労働環境を改善する努力が行われています。
ここでは、人手不足解消のために、サービス業界で行われている取り組みについて紹介します。
労働環境の改善
まずは長時間労働の削減や、業務の過剰な負担の見直しに取り組んでいるところが多いです。
アルバイト・パート従業員でも条件を満たしていれば「残業手当」や「有給休暇」の取得が可能になるなど、待遇改善にも力を注いでいます。
スキルアップできる環境を作る
サービス業界では、離職者を減らすための取り組みのひとつとして、スキルアップできる環境づくりを行っているところもあります。例えば「定期的な研修の機会を提供している」「資格取得の支援を行っている」「非正規雇用の従業員に対し正社員登用を行っている」などが挙げられます。
日々業務をこなすだけの職場ではなく、就業を通して「キャリアアップできるビジョン」を提供し、若手の労働者確保を行っているようです。
定期的な教育・研修の場をつくる
クレーム対応や接客、ハラスメントやメンタルヘルスなど、定期的にスキルアップや知識のアップデートができる機会を作るという取り組みをしているところもあります。
特にサービス業はストレスも多い仕事のため、自分のメンタルを守るための考え方やセルフケアの方法などを学んでおくことは大切です。
省人化する
IT機器やシステムを導入することで「マンパワーを必要とする業務を減らす」ための取り組みも進められています。
無人のセルフレジの設置や、飲食店で商品の注文をタッチパネル式にするなど、人手が必要な業務を絞り込む形です。また、近年では「無人コンビニなどの無人店舗がオープンするなど、積極的な改革が行われています。
経理業務を在宅のリモートワーカーに外注するなど、クラウドソーシングを取り入れ、省人化している企業も増えています。
外国人材の雇用を検討する
日本では、少子高齢化による人口減少が進み、2056年頃には日本の総人口が1億人を下回るとの推計があります。
[参照]日本の将来推計人口(令和5年推計)|国立社会保障・人口問題研究所 (ipss.go.jp)
人口減少は労働人口の減少にも直結しているため、人材確保に「外国人労働者」の積極的な雇用を行っている企業も増加しています。
サービス業界で外国人雇用を行うメリットには、近年のインバウンド需要増加に伴う「接客の多言語化」や「外国文化への配慮」に対応できる、などが挙げられます。
しかし、外国人雇用には「言葉の壁」や「価値観の違い」などの課題があることも事実です。
外国人人材に活躍してもらうためには、日本のマナーや、お客様が求めている接客とはどんなものなのかを理解するための教育が不可欠です。
まとめ
サービス業界の人手不足解消には、労働時間の是正や柔軟な働き方、外国人の雇用、研修体制など「多角的な改善」が必要です。
人材確保のために外国人雇用を取り入れたにもかかわらず、価値観の違いやマナーの違いでうまく活躍できなければ、本末転倒です。
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