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景気回復に必要な政策は?
就業率と景気の良し悪しは、相互関係にあるといわれています。2009年のリーマンショック以降、景気の回復とともに就業率は改善されてゆきました。今では完全に「売り手市場」となり、さまざまな分野において人手不足が問題になっています。
今後も景気回復路線を進めていくには、どのような政策が必要なのでしょうか。
人手不足解消が必要
帝国データバンクが、「2024年の景気回復のために必要な政策」について企業にアンケートを行ったところ、
1位「人手不足の解消」(40.7%)
2位「中小企業向け支援策の拡充」(34.8%)
3位「原材料不足や価格高騰への対策」(34.6%)
4位「個人向け減税」(33.1%)
5位「個人消費の拡大策」(32.4%)
6位「法人向け減税」(28.8%)
7位「所得の増加」(25.5%)
7位「雇用対策」(24.5%)
という結果が出ました。
「人手不足の解消」は前年よりも12.0ポイント、「雇用対策」は5.7ポイント増加しています。
また、2024年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料としては、1位「原油・素材価格(上昇)」、2位「人手不足」、3位「為替(円安)」がランクイン。こちらも「人手不足」のポイントが前年度から14.4ポイントも伸びており、多くの企業が人手不足を懸念していることが伺えます。
[参照]2024年の景気見通しに対する企業の意識調査 | TDB景気動向オンライン (tdb-di.com)
失業から人手不足へ
2009年に起きたリーマンショックでは多くの失業者が生まれたため失業率は高く、就業率は低いものでした。
10年近くを経る間に就業率は改善されてゆき、今では完全に人手不足の状態にシフトしてしまっています。
具体的な数字で見ると、2024年5月の有効求人倍率は1.24倍です。2022年7月時点は1.29倍です。2021年7月は1.14倍、2020年7月は1.08倍でした。
有効求人倍率とは、仕事を探す人1人に対して企業から何件の求人があるかを示すもので、1より低ければ求人に応募する人の方が多く、1より高ければ求人を募集する企業の方が多いことになります。
少子化や働き方の選択肢の増加により、今後も企業では深刻な人手不足や採用難が続く可能性が高いと言えるでしょう。
[参照]厚生労働省:一般職業紹介状況について(令和4年7月分)
人手不足の深刻化が見込まれる
困ったことに、今後さらに人手不足が深刻化していくと見込まれています。人手不足の深刻化に対し、見込まれている数字と人手不足への対策について見ていきましょう。
2030年に人手不足は644万人
パーソル総合研究所と中央大学の共同研究によると、2025年の人手不足の推計は505万人、2030年では644万人と予測されています。
産業別で考えた場合、最も人手不足が生じるのはサービス業(400万人)、続いて医療・福祉(187万人)です。
職業別で考えた場合は、専門技術を要する職に就く人が212万人の減少見込みとなっています。
[参照]パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」
人手不足の対策
「労働市場の未来推計2030」では、人手不足への対策として、以下の施策を提言しています。
・女性、高齢者、外国人の労働者人数を増やすこと、AI等の技術革新による生産性の向上
先に挙げた2030年に不足する644万人の働き手を、出産・子育てのために離職する女性、定年を迎え退職した高齢者層、外国人労働者で補填し、技術革新により生産性を上げることで、足りないマンパワーを補おうという考え方です。
子育て中の女性が働くためには、子どもを預けられる施設の充実が必要となります。
仮に2030年時点で102万人の働く女性を増やすためには、116.2万人分の未就学児童の保育先を確保する必要があるとのこと。
また、定年退職した後も仕事に就きたいと希望する高齢者は、約80%に上るようです。そのうち、約36%が離職理由に「仕事が見つからないため」と挙げています。
このような層を積極的に受け入れることで、2030年時点で約163万人の労働者が確保できると推測されています。
外国人労働者に関して、2018年12月に新たな在留資格で外国人労働者を受け入れる出入国管理法が改正されました。この改正で、約50万人の外国人労働者の増加を目指すとされています。これを元に、2030年時点での外国人労働者は約81万人に達していると推測されています。
賃金が上がらない状態で2030年を迎えると、人手不足はさらに進行すると考えられています。人手不足を助長しないように、待遇改善や賃上げを行う取り組みが必要と提言されています。
[参照]:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」
2分の1の会社が人手不足で悩んでいる
最近では、人手不足が原因となり企業の倒産までが懸念されるようになってきてしまいました。
実際のところ、2024年時点で、企業の51.0%が人手不足という調査が出ています。仕事の発注があっても、請け負える人員がいなければ対応できず、経営成績は伸ばせません。
人手不足の原因としては、少子高齢化と労働のニーズの過多が考えられます。人手不足の詳しい要因と、人手不足の解消法について解説します。
[参照]:人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月) | TDB景気動向オンライン (tdb-di.com)
人手不足の原因
現在の人手不足は、少子高齢化により生産年齢人口が減少しているだけでなく、さまざまな要因も絡み合うことで起こっていると考えられています。世の中の動きや企業による要因としては以下のとおりです。
・能力や経験と合っていない不適性業務に就く
・さまざまな格差(教育・能力・賃金など)
・多様化した価値観
また、労働者側の要因としては以下の3点があげられます。
・管理職・リーダー職を望まない
・残業を好まず、週休2日制を望む
・フルタイム勤務ができない環境(介護や育児・闘病など)
人手不足の解消法
人手不足による企業へのダメージを解消するには、以下の方法が考えられます。
・業務の効率性を上げる
少ない人員で成果を上げていくために、業務を効率的に行うための施策を考えましょう。フルタイム勤務にこだわらずフレキシブルな勤務体制を作る、適材適所に人員を配置する、業務のマニュアル化などが必要となってくるでしょう。
また、近年は生成AIツール(ChatGPT、Copilotなど)やDXのサービスなども増えています。これまで時間をかけて作成していた資料をAIを使用して時間短縮するなど、個人ベースでできる効率アップ方法を社内で検討していく必要もあります。
・不適性採用をできるだけなくす
その企業が求める人材像を明確にしておくと、採用してからのミスマッチを防ぐことができます。
・採用の間口を広げる
積極的に、潜在的な労働力保持者である子育てや介護をしながら働く人や、女性や外国人の採用を進めるのも、人員を確保するよい方法です。妊娠や出産・子育てに対するフォローを手厚くすることで、女性社員の定着につながります。
・待遇改善・福利厚生の充実を図る
辞めていく人を減らし、今いる人員の定着を目指します。経験を積んだ社員が増えることで、業務を効率的に進めることができるでしょう。
このような施策は、今後の人手不足への有効な対策といえるでしょう。しかし、現時点での人手不足をすぐに解消できるわけではありません。
人手不足の問題は、一朝一夕で解決するのは困難です。すぐにでも必要な人材を確保したい場合は、人材派遣会社にご相談ください。採用時のミスマッチを減らすことにもつながるでしょう。
・研修制度を整える
働き手は、せっかく入社するなら成長できる会社に入りたいという気持ちがあります。特に最近の若い世代はそれが顕著です。
入社時の研修や、定期的なスキルアップの機会などを導入することは、間接的に人手不足への対策となります。
まとめ
少子高齢化が進む現代では、さまざまな分野で人手不足が悩みの種となっています。
中小企業では、実に6割もの企業が人手不足に悩まされており、倒産にまでつながるケースも増えてきているのです。
企業が業務成績を上げ景気回復につなげるには、人手不足を解消することが必要です。人手不足を解消するために企業ができる施策としては、ひとつに採用の幅を広げることや離職者を減らすことなどの、人員確保のための施策があります。
一方で、今在籍している人員で不足している人手を補えるよう、業務の効率化を進めることも重要な施策のひとつになります。
今後、少子高齢化がさらに進むにつれて、人手不足も深刻化していく事が考えられます。安定した景気のためにも対策をすすめていく事が大切です。