人手不足の解消に向けて「働き方改革」から“企業が行う取り組み”

厚生労働省の一般職業紹介状況によると、近年の我が国の有効求人倍率は1.6倍を超えています。2018年の有効求人倍率は9月が1.64倍、10月は1.62倍、11月は1.63倍という数字が出ています。つまり、それだけ「人材が不足している」ということになります。 政府は人手不足の問題に対し「働き方改革」を掲げて取り組みを始めています。企業としても、人手不足に陥るとさまざまな弊害が生じることから、改善に向けた努力が必要となるでしょう。どのような取り組みが可能で、有効なのでしょうか。


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働き方改革について

安倍内閣は、2016年から「働き方改革」を主導。「働き方改革実現推進室」を設置し、労働環境の改善への取り組みがスタートしました。

働き方改革とは「一億総活躍社会」を実現するための挑戦という位置づけにあります。この「一億総活躍社会」とは、老若男女を問わず国民誰もが、家庭や職場や地域などで活躍できる社会を意味します。

では、どのような目的で、この働き方改革は行われているのでしょうか。

“働き方改革”を行う目的は?

少子高齢化が進む現代の日本。広い分野にわたって、人手不足の問題が深刻化しています。国が推進している働き方改革は、多様な働き方を推進し、人手不足による企業の経営悪化などを防ぐという狙いのもとに行われているのです。

人手不足は、企業の健全な経営に大きく悪影響を及ぼし、働いている従業員へのしわ寄せも大きなものとなってしまいます。また、企業の経営が縮小してしまうと、税収も減少し、国力低下に繋がるため、政府としても働き方改革として国をあげて取り組む必要があるのです。

中小企業で起きている人手不足からくる問題点

少子化が進み、生産年齢人口は減少しています。働き盛りの年代の人口が減っている上に、景気回復により求人は増加傾向にあるため、大企業でも人材確保が難しくなってきています。

中小企業となると、よほど好待遇での求人をかけないかぎりなかなか応募も来ず、人材確保は非常に厳しい状況にあるといえるでしょう。通勤が可能な範囲に住む人が求人に応募すると考えられるため、地方や過疎地域であるほど、人材確保の難しさは深刻です。

人手不足に陥ると、さまざまな弊害が起こり得ます。ひとつは、現在働いている人への負担の増加です。足りない人数で仕事をこなさなければならない場合、一人ひとりの仕事量の負担は増加します。残業や休日出勤の必要も出てくるでしょう。

増加した負担分の報酬を手厚くするためにはさらに業績を上げる必要があり、そのために仕事量がより増えてしまうという悪循環が起こります。そのような環境では転職してしまう人も増え、人手不足に拍車がかかってしまうでしょう。

また、このような状況の中で労働力が低下すると、商品やサービスの提供に支障が生じる恐れもあります。売り上げへのダメージも大きく受けることになってしまうでしょう。

このように人手不足による問題は多数存在しています。

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深刻な人手不足への対策を考える

中小企業が人手不足によって抱える問題点は、非常に深刻です。では、どのような対策が考えられるでしょうか。

働き方改革の課題

働き方改革の中で、政府が最も力を入れているのが、長時間労働の改善です。残業が常態化した生活は、健康を損なうだけではなく、仕事と家庭生活の両立を困難にするため、少子化の原因や女性が社会に進出し続けることを阻害する要因と位置付けられています。

実際に正社員として働いている人にとっては、残業だけではなく、転勤や配置転換の命令に従わざるを得ない実情があります。命令に従わない場合は、パートや契約社員といった雇用形態に切り替えられてしまう恐れもあるのです。

女性の場合は、長時間労働を強いられることで、出産・子育てとの両立が難しいという問題があります。出産のためにキャリアが中断されることをためらい、出生率の低下に繋がると考えられているのです。

長時間労働の原因となる時間外労働に関するものに「36協定」というものがあります。残業時間などに上限を設定するものですが、特別条項を入れると残業時間の上限を延長することができるというものです。

働き方改革の取り組みの中で、この項目に関する法律を見直すことが大きな目標となっています。

技術やスキルに長けた女性やシニア世代、外国人の雇用

労働人口の減少への対策として、出産・子育てで離職していた女性の復職、定年退職したシニア層の再就職、外国人労働者の受け入れなどが考えられます。

・女性の復職

産休や育休などの制度の見直し、フレックス制の適用、リモートワークなどの分業の取り入れなど、職場復帰しやすい環境を整えることが大切です。

・シニア層の再就職

長年培った経験や高いスキルを活かすことで、戦力になってもらいやすいでしょう。定年退職したシニア層の約80%が、仕事に就きたいと考えているという調査結果もあるようです。

・外国人労働者の受け入れ

高い就労意欲を持った外国人を積極的に採用することで、人手不足の解消はもとより、社内に活気と刺激をもたらしてくれることでしょう。

ただ、外国人労働者を受け入れるといっても、すぐには難しいものです。どうやって採用すればよいのか、採用後の手続きはどうしたらいいのかなど問題がたくさんあるでしょう。

そういう場合は、外国人材サービスを行っている派遣会社を利用することをおすすめします。

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厚生労働省が運営する「働き方・休み方改善ポータルサイト」

厚生労働省が運営する「働き方・休み方改善ポータルサイト」があります。ポータルサイトの活用方法について、見ていきましょう。

ポータルサイトの活用方法

「働き方・休み方改善ポータルサイト」は、企業が社員の働き方・休み方の見直しや、改善に取り組む際に役立つ情報を提供する目的で運営されています。

「働き方・休み方改善指標」を用いた診断チャートを活用することで、社員がどのような働き方をしているか、また休みを適切に取得しているかを確認できます。結果は図で示され、問題点などを確認するのに役立ちます。

また、サイト内では、自社の取り組み内容を各企業が公開しています。以下で説明する、「働き方・休み方」に関わる制度や支援策の情報を確認することができます。

制度・支援策について

・年次有給休暇の取得促進

土日・祝日に合わせて年次有給休暇を取得することで、連休を実現しようという「プラスワン休暇」や、年次有給休暇の付与日数から5日を差し引いた残りの日数を、企業が自由に割り振ることができる「計画的付与制度」の活用を勧めています。

・働き方・休み方改善コンサルタント

コンサルタントが個別にアドバイスをしてくれます。また、労働時間や休暇の取得に関する説明会の講師派遣や、ワークショップの開催をおこなってくれます。

・時間外労働等改善助成金

時間外労働の削減や年次有給休暇の取得を推進している企業に対し、取り組みに応じて助成金が支払われる制度です。5つのコースが用意されています。

・特別な休暇制度の普及促進

ボランティア休暇や裁判員休暇など、法律で定められた休暇以外に、労使の話し合いで企業が設定する休暇を推奨しています。

全国の企業が設定している特別休暇の詳細を検索することが可能ですので、自社の参考にすることができます。

・勤務間インターバル制度普及促進のための取り組み

勤務間インターバルとは、就業終了時間から一定以上の時間を休息時間として挟み、社員の生活時間を守るという考え方です。

例えば、残業のために就業時間が遅くなった時など、就業時間までの時間が休息時間に満たない場合は翌日の就業時間を遅らせることができるといったものです。この取り組みには、先に紹介した助成金が設定されています。

・テレワークの推進

インターネットなどを利用し、在宅やモバイルワークなどで、出社の必要がない勤務形態を推進しています。

子育て中や闘病中の人、遠隔地に住んでいる人などでも就労を継続しやすくなるため、人手不足の改善に有効なシステムです。

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まとめ

働き方改革に沿った人手不足へのアプローチとして、企業ができる取り組みには長時間労働の改善や、外国人労働者などの人材を幅広く受け入れることが必要だということがわかりました。政府も、これらの企業の取り組みへの助成金など、サポートする体制を整えつつあります。

少子高齢化が進み、さらに人手不足が深刻化すると予想される中で、できる取り組みから始めるとよいのではないでしょうか。