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外国人労働者の採用で注意すべき文化の違いとは
外国人と日本人で常識と考えている事柄に違いがあるのは、国ごとに異なる文化がある以上、避けられないことです。
同じアジアの国々でも、その違いは顕著です。たとえば中国と日本は近隣であり、歴史的にも長い交流がありますが、食事ひとつとっても文化やマナーは異なります。
実際にどのような文化の違いがあるのか、日本で働く外国人労働者の割合が多い国を中心にご紹介します。
国別で見る外国人労働者の割合
外国人労働者の文化の違いを知るには、実際に働いているスタッフに聞き取り調査をすることが最も効果的ですが、採用を検討している段階では難しいでしょう。
そのようなときは、日本で働いている外国人の国別の割合を参考に、国をいくつかに絞って予習しておく方法がおすすめです。求人に応募してくる可能性が高い国籍を最低限抑えておけば、スムーズに採用・教育ができます。
厚生労働省発表の資料によると、現在、日本国内で従事している外国人労働者は2,302,587人(前年比25万人ほど増加)。届出が義務化された平成19年以降過去最多となりました。(令和6年10月末時点)
国別の割合のTOP4は以下の4国です。
- ベトナム 570,708人(24.8%)
- 中国 408,805人(17.8%)
- フィリピン 245,565人(10.7%)
- ネパール 187,657人(8.1%)
[参考]「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)|厚生労働省
各国と日本の文化の違いと対処法
外国人労働者の割合が高い中国・ベトナム・フィリピン・ネパールの4国をメインに、ここでは実際の文化の違いについて解説します。
人それぞれの個性もあるため、あくまで集団としてとらえた場合の傾向ですが、各国で以下のような傾向があります。
- 中国…合理的な考え方をする
- ベトナム…会社や仕事よりも個人や家族を大切にする
- フィリピン…外国への出稼ぎが一般的
- ネパール…家族やコミュニティを大切にし、助け合いの精神が強い
以下では、それぞれの国の労働者について詳しく説明していきます。
中国人労働者の傾向
中国人労働者は、合理的な考え方に基づいて仕事をします。そのため、営業や販売の仕事では「この人は買うかどうか分からない」という場合には、営業や接客に対してやや消極的です。しかし、相手に購入意思があると感じると、営業や接客をとても熱心に行います。
実は中国のほうが労働時間は長いため、日本で働く場合自国で働くよりも短い時間で働くことができます。真面目に合理的に取り組む国民性を活かせる仕事を任せれば、その力を最大限発揮してくれるでしょう。
ベトナム人労働者の傾向
ベトナムは、会社や仕事よりも、個人や家族を大切にする傾向が強い国民性です。そのため、「会社やチームの利益のため」というよりは、企業理念をしっかりと共有し共感してもらうことや、個々のプライベートの尊重が大切です。
また、真面目で学習能力が高く、実力主義の考えを持っています。そのため、日本独特の年功序列は理解されにくいでしょう。金銭によるモチベーションが強く影響するため、国籍や年齢ではなく、能力に見合った適切な評価をしましょう。
フィリピン人労働者の傾向
フィリピンは、外国への出稼ぎが一般的で、政府も出稼ぎに関する政策を進めています。一時的な雇用であればとくに注意点はありませんが、直接雇用・長期雇用する場合はフィリピン政府指定の人材派遣会社を通さなくてはなりません。
また、フィリピンでは英語が公用語となっており、比較的、意思疎通が図りやすいメリットを持っています。また、英語を活かす仕事であれば、もともとの言語を利用できるため、高いパフォーマンスを期待できます。
ネパール人労働者の傾向
ネパールは、家族やコミュニティを大切にする国民性が強いです。助け合いの精神が根付いており、困っている人がいれば進んで手助けをします。ネパール人労働者は、勤勉で真面目な姿勢を持ち、職場でのチームワークを大切にする傾向があります。
また、宗教への信仰が厚く、日常生活の中で宗教的慣習を大切にしています。特に、ヒンドゥー教の影響が強く、牛肉を食べないなどの食の制約もあります。
ネパール人労働者を雇用する際は、彼らの文化的背景や宗教的信念、価値観を理解し、尊重することが重要です。適切なサポートと配慮を行うことで、彼らの力を最大限に引き出すことができるでしょう。
外国人労働者の雇用で必要なのは文化への理解と対策
日本で従事する外国人の割合トップ4は、先にあげたベトナム・中国・フィリピン・ネパールですが、その他の国籍を有する外国人労働者もいます。ヨーロッパやアフリカなどからも労働を目的とした人が多く入国しています。
そこで、この項目では『外国人労働者』全体に当てはまる、採用する際の文化の違いに対する注意点をご紹介します。
ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の違い
国ごとの文化が多様なのは当たり前のことですが、外国人労働者との間に認識のズレが起こる理由のひとつは、コミュニケーション方法自体の違いです。
アメリカの文化人類学者は、世界の文化を2タイプに分けることができると論じました。『ハイコンテクスト文化』と『ローコンテクスト文化』です。ハイ・ローとそれぞれ付けられていますが、これは文化レベルの差ではなく、文脈に高く依存するか、依存度が低いか、ということを表しています。
- ハイコンテクスト文化…コミュニケーションにおいて多くの情報が文脈や非言語的な要素(ジェスチャー、表情、トーンなど)に依存している文化。全てを言葉にしなくても、背景や状況から意味を読み取り合う。
- ローコンテクスト文化…コミュニケーションにおいて情報が主に言葉に依存している文化。メッセージは明確で直接的に伝えられ、文脈に頼ることが少ない。聞き手は言葉の通りに受け取る。
簡単に分けると、このような違いがあります。
ハイコンテクスト文化は『言外の意図も察してもらう文化』で、日本で当たり前の「お察しください」「空気を読む」とは、このハイコンテクスト文化に当てはまります。
ローコンテクスト文化は、よく欧米人の典型的なイメージにある『イエス・ノーをはっきりと口にする』ことです。ハイコンテクスト文化が相手の理解力を要するのに対し、ローコンテクスト文化は伝えたいことをすべて言語化するため、相手に察してもらう必要がないのが特徴です。
日本は紛うことなくハイコンテクスト文化ですが、企業のグローバル化に伴い、ローコンテクスト文化を意識して実践しようとしている会社も増えています。日本特有の遠回しな言い方はせず、外国人労働者にははっきりと伝えるよう意識することで、お互いの認識のズレやトラブルを回避することができます。
例えば、
「~してもらえると嬉しいです」→「~してください」
「できるだけ早くお願いします」→「○時までにお願いします」
「ちょっと難しいですね」→「申し訳ないですが、それはできません」
など、具体的に伝えるのがポイントです。
日本人であればニュアンスで伝わることでも、外国人にとっては真意がわかりづらいことが多々あります。
異なる文化を持つ外国人労働者の教育方法
国民性などの文化に加え、コミュニケーション方法の違いを認識して教育に当たれば、外国人労働者をスムーズに雇い入れることが可能になります。
実際に多くの外国人労働者を雇用している会社で行われている対策や教育方法を参考にするのもおすすめです。たとえば、外国人労働者を積極的に雇い入れている会社では、以下のような工夫がなされています。
- ・日本の価値観ではなく、『自社』の理念やルールを教育する
- ・言わなくても『常識』で分かるだろう、とは考えず、説明する
- ・各国の宗教や文化に配慮した職場環境を整える
外国人労働者を受け入れる場合は、宗教や文化の多様さを理解し、それらに配慮した職場環境づくりが必要です。
祈祷部屋や食堂の食材の表記など、宗教的、文化的に必要なものや避けるべきものに対する配慮を行いましょう。
外国人就労はハローワークや人材派遣会社で申し込み
外国人労働者を受け入れる際は、ハローワークなどを利用するのもいいでしょう。民間の人材派遣会社を利用することもできますが、フィリピンのように一部の国では政府が主導して外国での労働をサポートしている国もあります。
日本でも、政府による各種支援が存在するため、利用してみてはいかがでしょうか。
ただし、あくまで『外国人労働者』を雇用するための支援であるため、特定の事業に特化した人材を募集するには向いていない場合も少なくありません。
事業にマッチした人材や、希望するスキル等がはっきりしている場合は、人材派遣会社を利用すると、効率良く希望に沿った雇用のサポートをしてもらえます。
まとめ
外国人労働者を雇用する際に多い認識のズレやトラブルは、会社とのミスマッチが原因とは限りません。国ごとの文化や、コミュニケーション方法の違いに原因があるケースがほとんどです。
外国人労働者をスムーズに採用するためには、『日本の常識は世界の常識ではない』ことを念頭に入れ、国ごとの文化を理解した社員教育を行いましょう。
日本人社員に対しては、異文化理解のマインドや、異文化の方と働くときの注意点を教育することをお勧めします。反対に、外国人労働者にも日本人の感覚や考え方の傾向・特性を外国人労働者に知ってもらうことも大切です。お互いが相手のことを理解し歩み寄ることは、チームワークの高い職場の実現に効果的です。