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2022.09.17 本・読書
「老人支配国家 日本の危機」著者エマニュエル・トッド

キーワード:少子高齢化社会

こんにちは。

ライフ・リノベーター 笹川祐子(https://twitter.com/imaginenext_ceo)です。

今朝は、プールにも行かず、論文のための資料を早朝から読んでいます。

昨日は、仕事で忙しく、人と人をつなぐ、充実した日でした。

9時近くに、ジンギスカンを食べて、クラフトビールを飲むと、もう疲れてしまい、

読書と勉強やる気が出ませんでした。

寝ながらも、あー、論文が進まない、明日の午前中はしっかり集中しようと思ったのです。

さて、これまた示唆に富む、本に出会いました。

少し長文になりますので、お時間ある時、ご覧ください。

 

「老人支配国家 日本の危機」

 

著者は、エマニュエル・トッドさんというフランスの歴史人口学者、家族人類学者です。

本書全体を通じて、自称「日本人愛国者」であり、日本の人口問題、現状の課題に精通しています。

日本人以上に、日本の将来を憂え、日本の可能性を信じ、提言をしてくださっていることに感動しました。

ご本人の主張、本の帯によると、多少過激かなとも思いますが、

“若者の生活を犠牲にして老人のコロナ死亡率を抑えた日本だが、社会の存続に重要なのは高齢者の死亡率より出生率だ。

「家族」が日本社会の基礎だが、「家族」の過剰な重視は「非婚化」「少子化」を招き、かえって「家族」を殺す。

本当の脅威は、「コロナ」でも「経済」でも「中国」でもない。「日本型家族」だ!

核武装から皇室までを語り尽くすトッドの日本論!”

ということで読んでみました。

 

「日本は核を持つべきだ!」という主張もあるのですが、

安全保障問題以上に、日本の存亡に直結する最優先課題が、少子化対策と言うのです。

人口問題の専門家という立場は別としても、この少子高齢化は誰もが認める最大課題だと思います。

国家が思い切って積極的な少子化対策を打つこと、出生率を上げるための社会制度を整えることこそ、最優先課題だ」と言い切っています。

そして、その阻害要因となるのが、

日本における直系家族的な価値観が育児と仕事の両立を妨げ、少子化を招いていることです。家族のことを家族にばかり任せるのではなく、出生率上昇のために国家が介入すべきです」

トッド氏は、30年ほど前に、日本に初訪日され、すでに人口問題が議論されていたので、先見性に関心したそうです。

ところがその後、訪日のたびに意見を求められるものの、結局、この30年間、日本は少子化対策も移民対策もほとんど何の手も打ってこなかったことに、失望しました。

確かに、本当に、この30年、日本の国力は落ち続けていると、私は経営者として忸怩たる思いを感じてきました。

また私が20代の頃、日本の国力の高さ、世界の中の日本のポジションの高さを誇りにも思っていたのに、どんどん薄れていく実感があります。

トッド氏は、日本に来るたび、悲観論を聞くそうですが、「日本の教育水準、秩序ある社会、技術と工業力は申し分なく世界をリードしている」と日本の良いところは認められています。

そして専門家として、「少子高齢化と人口減少だけは危険水域に達している」と警鐘を慣らしているのです。

 

直系家族とは

 

日本はドイツと同じ直系家族(子どものうち1人が跡取りとなり、結婚後も親と同居し遺産を相続する)。

直系家族は、「(親子間の)権威主義」と「(兄弟間の)不平等主義」という二つの基本的価値を併せ持つ。

今は、日本でも核家族が進んでいますが、お盆や年末の帰省ラッシュは、確かに直系家族というものを物語っていますね。

そして、日本人の無意識のバイアスに、ジェンダー論にも出てきますが、「長男だから」「親の面倒はみる」「女の子はよそにお嫁にいくから」「跡取りだから」「俺は三男だから跡は継がなくていいんだ」などという感覚がありますね。

 

トッド氏の分析する家族類型

 

では、直系家族以外はどういうふうになっているのか、トッド氏は大きく5つに分類しています。

世界にはこのような家族システムがあるのだと、新しい学びと気づきになりました。

ダイバーシティ、多様性を理解するには、こういう育った環境、背景を知ることも大切ですね。

「絶対核家族」英米を中心に

子どもは早くから親元を離れ、結婚すると独立した世帯を持つ。

遺産相続は親の意思による遺言。

親子関係は自由で、兄弟間の平等は重視されない

「平等主義核家族」フランス北部や広大なパリ盆地、スペイン、イタリア北西部など

結婚すると独立は英米型と同じ。

相続においては子ども間で平等に、男女差別なく分け合う。

直系家族 ドイツ、フランス南西部、スウェーデンやノルウェー、日本、韓国など

通常は男子長子が跡取りとなり、結婚後も父の家に住んで、全てを相続。

親子関係は権威主義的(親の権威に従う)で兄弟間は不平等

共同体家族

男の子どもが全員、結婚後も親の家に住み続ける家族形態。

相続は平等だが、親子関係は権威主義的。

家族が一つの巨大な共同体。

 ◆外婚性共同体家族 イトコ婚を認めない

  中国、ロシア、北インド、フィンランド、ブルガリア、イタリア中部のトスカーナ地方など

 ◆内婚性共同体家屋 イトコ婚を選好する

  アラブ地域、トルコ、イランなど

 

直系家族的な価値観とは?

 

ヨーロッパでも日本と同じように、直系家族は数世紀という長い時間をかけて定着した。

知識や技術の伝承に長けた家族システムなので、これが広がる過程で社会が飛躍的に進歩する。

直系家族とは、継続性と柔軟性を兼ね備えたダイナミックな社会である。

一方、直系家族がいったん完全に確立してしまうと、今度は社会全体が継続性だけを重視するようになり、「化石」化の傾向に陥りがち。

日本の歴史学者、磯田道史氏が、この著書の対談に登場し、直系家族についても話しています。

否定的な面としては、

組織の維持を優先するあまり、組織が硬直化してしまっても変革に踏み切れない。

肯定的な面としては、

家の存続のためには継承者の能力が重要となるので、徹底して教育に力を入れるところ。

という見解を述べられています。

まさに、変革に踏み切れないところがありますね。

他の方々のご意見で、日本再生のためには、昭和的な価値観から脱却せよという話を聞きます。

昭和的なるもの、昭和の成功モデルは、ここで言われている、直系家族的な価値観にも繋がると思います。

 

日本の女性の地位について

 

トッド氏曰く、

「ユーラシア大陸の家族システムを分析して得た結論の一つは、家族システムの推移を歴史的に見ると、核家族よりも直系家族の方が新しく、直系家族よりも共同体家族の方がさらに新しく、

女性の地位に着目すると、核家族の双系制的なあり方よりも、父系的な直系家族では地位が下がる。 〜〜

つまり、ユーラシア大陸の大部分で数世紀にわたって進行してきたのは、実は、女性の地位低下に他なりません。

〜~ ことに明治以降、直系家族が完成に向かうと、それが加速しました。

私は日本で少子化が進む要因の一つはここにあると思います。

日本には学歴の高い女性、社会で働いている女性も多い。

しかし、一般的にいって、日本人の間では、「なんでも家族内で解決すべきだ」という家族イデオロギーが強すぎるのではないでしょうか。

その負担が女性を自由に生きさせることを妨げているではないかと。

女性の地位を上げて労働と出産・育児を両立させ、人口増加につなげたいのであれば、日本はむしろ過去に、たとえば江戸時代ぐらいのルーズさに戻ることを考えた方がいいのでは」

 

感想

 

この直系家族的価値観は、日本全体の政財官界にもみられることではないでしょうか。

権威主義、上位下達、現状維持、変わることを好まない、などなど。

グローバルスタンダードに合わせた、多様性のある社会を目指したい。

そのためには、女性や若者、外国人などのマイノリティの参加を増やしていくは、この直系家族的価値観(昭和的価値観、日本人の働き方や家事・育児への意識)の切り替えが重要。

と、堂々巡りになってしまいます。

ですが、トッド氏の提言のように、育児と仕事の両立、社会制度を整えることに、国家が介入すべきと思います。

国の施策も一生懸命取り組まれれていると思いますが、世界の変化のスピードが速く、不確実性の時代において、官民いっそうのスピードアップが求められると思います。

また個人においても、国や会社に依存しない生き方に変えていく時代ですね。

外国人の人口問題専門家から見た日本の良い点や提言には、気づきがたくさんありました。

 

 

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